選日(せんじつ)は、日本の暦注に記されている特別な吉日や凶日を指します。人生の重要な節目や行事、契約、建築などの日取りを決める際に、選日の吉凶を参考にすることで、運勢を良い方向に導くとされています。暦注の中で特定のカテゴリに属さない日の総称で、撰日(せんじつ)や雑注(ざっちゅう)とも呼ばれます。これらは、その日の干支や天体の動きに基づいて吉凶を占うもので、日常生活や重要な行事の計画において参考とされています。

選日は種類ごとに異なる意味を持ち、それぞれの特徴や適した行動、避けるべき行動が定められています。以下に代表的な選日を詳しく解説します。

代表的な選日の種類

1. 八専(はっせん)

意味:
八専は、日干支が壬子(みずのえね)から癸亥(みずのとい)までの12日間のうち、十干と十二支の五行が一致する8日間を指します。

該当日:
壬子、甲寅、乙卯、丁巳、己未、庚申、辛酉、癸亥。

特徴:

  • 気の流れが乱れ、物事が停滞しやすい凶日とされます。
  • 残りの4日は「間日(まび)」と呼ばれ、この影響を受けない日です(癸丑、丙辰、戊午、壬戌)。

注意点:
新しいことの開始や大きな決断を避けるべき期間とされます。

2. 十方暮(じっぽうぐれ)

意味:
十方暮は、日干支が甲申(きのえさる)から癸巳(みずのとみ)までの10日間を指します。この期間は、干支の五行が相剋するため、全方位の吉凶が失われるとされます。

該当日:
甲申、乙酉、丙戌、丁亥、戊子、己丑、庚寅、辛卯、壬辰、癸巳。

特徴:

  • どの方角も凶とされるため、遠出や移転には不向きです。
  • 万事が停滞しやすい期間とされています。

注意点:
大きな決定を避け、慎重に過ごすことが推奨されます。

3. 不成就日(ふじょうじゅび)

意味:
不成就日は、何事も成就しない凶日とされ、新しいことを始めるのに不向きとされています。

該当日:
旧暦に基づき、月ごとに決まっています。例えば、1月と7月では以下の日が該当します:

  • 3日、11日、19日、27日。

特徴:

  • 他の吉日と重なった場合、吉凶が相殺されることもあります。
  • 特に祝い事や契約などは避けるべきです。

注意点:
大きな行動や新規事業は控え、準備や見直しに適した日とされています。

4. 天一天上(てんいちてんじょう)

意味:
天一天上は、方位を司る天一神(てんいちじん)が天に昇る期間で、地上の方位に影響を与えないとされます。

期間:
癸巳(みずのとみ)から戊申(つちのえさる)までの16日間。

特徴:

  • 方位に関係なく移動や行動が吉とされます。
  • 旅行や引っ越しに適した時期。

注意点:
この期間を逃すと、天一神が特定の方位に戻るため、方位の吉凶が再び重要になります。

5. 三隣亡(さんりんぼう)

意味:
三隣亡は、建築や高所作業が凶とされる日で、「三軒隣まで亡ぼす」との意味があります。

該当日:
節月(暦の月とは異なる)と日の十二支の組み合わせで決まります。例えば:

  • 1月:亥の日
  • 2月:寅の日

特徴:

  • 特に家の新築や修繕などに不向き。
  • 伝統的に火災の恐れがあると信じられています。

注意点:
建築関連の作業は避け、日常生活では慎重に過ごすことが推奨されます。

6. 三伏(さんぷく)

意味:
三伏は、夏至後の3回目と4回目、立秋後の最初の庚の日を指します。初伏(しょふく)、中伏(ちゅうふく)、末伏(まっぷく)と呼ばれます。

特徴:

  • 陰陽五行説に基づく選日で、気が乱れやすいとされます。
  • 暑さが極まる時期で、新しいことや移動は避けるべきとされています。

注意点:
体調管理に気を付けるべき期間でもあります。

7. 一粒万倍日(いちりゅうまんばいび)

意味:
一粒の籾が万倍に実る稲穂になるとの意味で、新しいことを始めるのに最適な吉日とされています。

特徴:

  • 他の吉日と重なるとさらに効果が増すとされます。
  • ただし、借金や浪費をすると苦労が増えるため注意が必要です。

適した行動:

  • 新規事業の開始、貯金、財布の購入。

8. 犯土(ぼんど)

意味:
犯土は、土を動かすことが凶とされる期間です。

期間:

  • 大犯土: 庚午(かのえうま)から丙子(ひのえね)までの7日間。
  • 小犯土: 戊寅(つちのえとら)から甲申(きのえさる)までの7日間。

特徴:

  • 土木工事や土地に関する行動を避けるべき日。
  • 土地の神を怒らせると考えられています。

9. 臘日(ろうにち、ろうじつ)

意味:
臘日は、年末に行われる中国由来の祭礼に基づく日で、狩猟の獲物を先祖に捧げる風習がありました。

特徴:

  • 現在では吉凶に関する解釈が地域や文献によって異なります。

選日の実際の活用例

選日は、現代でも結婚式や引っ越し、新規事業の開始など重要な行事の際に参考にされています。以下は具体的な活用例です。

1. 結婚式の日取りの決定

  • 一粒万倍日や下段の天赦日を選ぶことで、結婚生活の幸運を祈願します。
  • 反対に、不成就日三隣亡は避けるべきとされています。

2. 引っ越しや転居

  • 方位の吉凶を無視できる天一天上の期間は、引っ越しや転居に最適とされています。
  • 十方暮の期間は、特に方位に注意が必要です。

3. 新規事業や契約

  • 一粒万倍日は、新しい事業や契約の開始に最適な吉日です。
  • ただし、不成就日に重なる場合は慎重な判断が必要です。

4. 建築や修繕

  • 三隣亡は建築や修繕を避けるべき日ですが、事前に暦を確認して別の日を選ぶことで問題を回避できます。

選日の歴史的背景

選日は古代中国の暦法に端を発し、日本に伝来した後、独自に発展しました。以下はその歴史的な流れです。

中国から日本への伝来

  • 選日の考え方は、陰陽五行説に基づいており、自然界の調和やバランスを重視していました。
  • 日本に伝わると、農業や季節の移り変わりを考慮して、地域の風習に合わせた解釈が加えられました。

日本独自の発展

  • 日本では農業社会が主流であったため、収穫や種まきに適した日として選日が重要視されました。
  • 室町時代以降、暦注が庶民にも普及し、選日は結婚式や祭事など生活全般に浸透しました。

選日の吉凶が重なる場合

暦では、吉日と凶日が重なることがあります。この場合、吉凶のバランスを考慮する必要があります。

例: 天赦日と不成就日の重なり

  • 下段の天赦日は最上級の吉日であり、不成就日の凶をある程度打ち消すとされています。
  • このような日は、「慎重に進めれば吉」と解釈されることが多いです。

例: 一粒万倍日と凶日の重なり

  • 一粒万倍日が凶日と重なる場合、その凶が増幅されると考えられるため、特に注意が必要です。
  • この場合は日取りを改めることが推奨されます。

選日の地域差と文化的背景

選日の解釈や活用法は地域によって異なる場合があります。

地域ごとの特色

  • 東北地方では農業の行事に選日が重視され、土に関する日(犯土など)が特に重要視されます。
  • 関西地方では、結婚式や祭事の日取りに天赦日や一粒万倍日が取り入れられることが多いです。

文化的背景

  • 選日は古くから日本人の心の拠り所となり、不安を和らげ、安心感を与える要素として生活に浸透してきました。
  • 現代でも、選日を活用することで精神的な安心感を得られるとされています。

選日と現代の生活

現代では選日が暦に記載され、簡単に確認できるようになっています。選日を意識することで、日常生活や行事の計画がスムーズに進む利点があります。

選日を日常に活用する方法

  1. カレンダーの活用: 吉日や凶日が記載されたカレンダーや手帳を使い、日取りを決める参考にします。
  2. デジタルツール: スマホアプリやウェブサイトで、選日の吉凶を確認できます。
  3. ライフイベントの計画: 結婚式や引っ越し、新しい仕事の開始などに選日を取り入れることで、良いスタートを切るきっかけを作ります。

まとめ

選日は、暦注の中でも特に重要な指針として古代から現代に至るまで日本人の生活に深く根付いています。それぞれの選日の意味や特徴を正しく理解し、適切に活用することで、人生の節目や日常生活をより良いものにすることができます。

選日は、日々の生活や重要なイベントの指針として日本人に親しまれてきました。吉日を選ぶことで安心感を得られ、物事がうまく進む可能性を高めます。一方で、選日の凶に過度にこだわらず、冷静に行動を計画することも大切です。

暦に記された選日を参考に、運勢を味方につけた行動を心がけてみてはいかがでしょうか。