七十二候は、二十四節気をさらに細かく3つに分けた暦法で、1年を72の季節に区切っています。それぞれの候が約5日間の短い期間を表し、その時期の自然現象や季節の移り変わりを示しています。七十二候は中国で作られたものが基となっていますが、日本独自の気候に合わせて名称や意味が調整されています。

以下では、七十二候の起源、特徴、具体的な内容、活用法について詳しく解説します。

七十二候の起源と特徴

起源

  • 七十二候は古代中国で作られた暦注が元になっています。
  • 日本には飛鳥時代以降に伝わり、日本の気候や自然に合わせて再編されました。

特徴

  • 1年を24の二十四節気に分け、さらにそれぞれを3つの「候」に分割。
  • 各候は約5日間で構成され、その期間に見られる自然現象や動植物の変化を表現しています。

七十二候の一覧

七十二候は以下のように分類されます。それぞれの候が自然の移り変わりを細かく表しています。

春(立春から立夏まで)

立春(2月4日ごろ)

  1. 東風解凍(はるかぜこおりをとく)
    春の暖かい風が吹き、氷が解け始める。
  2. 黄鶯睍睆(うぐいすなく)
    鶯(うぐいす)が鳴き始める。
  3. 魚上氷(うおこおりをいずる)
    魚が氷の割れた水面に姿を現す。

雨水(2月19日ごろ)

  1. 土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)
    雪が溶け、土が湿り気を帯び始める。
  2. 霞始靆(かすみはじめてたなびく)
    霞がたなびき始める。
  3. 草木萌動(そうもくめばえいずる)
    草木が芽吹き始める。

啓蟄(3月6日ごろ)

  1. 蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)
    冬眠していた虫が動き始める。
  2. 桃始笑(ももはじめてさく)
    桃の花が咲き始める。
  3. 菜虫化蝶(なむしちょうとなる)
    青虫が羽化し、蝶になる。

春分(3月21日ごろ)

  1. 雀始巣(すずめはじめてすくう)
    雀が巣を作り始める。
  2. 桜始開(さくらはじめてひらく)
    桜の花が咲き始める。
  3. 雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)
    春の雷が鳴り始める。

清明(4月5日ごろ)

  1. 玄鳥至(つばめきたる)
    ツバメが南から渡ってくる。
  2. 鴻雁北(こうがんかえる)
    雁が北へ帰り始める。
  3. 虹始見(にじはじめてあらわる)
    春の雨上がりに虹が現れる。

穀雨(4月20日ごろ)

  1. 葭始生(あしはじめてしょうず)
    葦(あし)が芽を出し始める。
  2. 霜止出苗(しもやみてなえいずる)
    霜が降りなくなり、稲の苗が成長する。
  3. 牡丹華(ぼたんはなさく)
    牡丹の花が咲く。

夏(立夏から立秋まで)

立夏(5月6日ごろ)

  1. 蛙始鳴(かわずはじめてなく)
    蛙が鳴き始める。
  2. 蚯蚓出(みみずいずる)
    ミミズが地上に出てくる。
  3. 竹笋生(たけのこしょうず)
    タケノコが成長する。

小満(5月21日ごろ)

  1. 蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)
    蚕が桑の葉を食べ始める。
  2. 紅花栄(べにばなさかう)
    紅花が咲き誇る。
  3. 麦秋至(むぎのときいたる)
    麦が実り収穫期を迎える。

芒種(6月6日ごろ)

  1. 蟷螂生(かまきりしょうず)
    カマキリが生まれる。
  2. 腐草為螢(くされたるくさほたるとなる)
    草の間からホタルが現れる。
  3. 梅子黄(うめのみきばむ)
    梅の実が黄色く熟し始める。

夏至(6月21日ごろ)

  1. 乃東枯(なつかれくさかるる)
    冬に生えた草が枯れ始める。
  2. 菖蒲華(あやめはなさく)
    菖蒲の花が咲く。
  3. 半夏生(はんげしょうず)
    半夏(カラスビシャク)が生え始める。

秋(立秋から立冬まで)

立秋(8月8日ごろ)

  1. 涼風至(すずかぜいたる)
    涼しい風が吹き始める。
  2. 寒蝉鳴(ひぐらしなく)
    ヒグラシが鳴き始める。
  3. 蒙霧升降(ふかききりまとう)
    深い霧が立ち込める。

処暑(8月23日ごろ)

  1. 綿柎開(わたのはなしべひらく)
    綿を包むガクが開く。
  2. 天地始粛(てんちはじめてさむし)
    大地と空が次第に冷え込む。
  3. 禾乃登(こくものすなわちみのる)
    稲が実り始める。

白露(9月8日ごろ)

  1. 草露白(くさのつゆしろし)
    草の上に白い露が宿る。
  2. 鶺鴒鳴(せきれいなく)
    鶺鴒(セキレイ)が鳴き始める。
  3. 玄鳥去(つばめさる)
    ツバメが南へ帰り始める。

秋分(9月23日ごろ)

  1. 雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)
    秋の訪れとともに雷が鳴らなくなる。
  2. 蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)
    虫が冬ごもりの準備を始める。
  3. 水始涸(みずはじめてかる)
    水が涸れ始める。

寒露(10月8日ごろ)

  1. 鴻雁来(こうがんきたる)
    雁が北から渡ってくる。
  2. 菊花開(きくのはなひらく)
    菊の花が咲き始める。
  3. 蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)
    キリギリスが戸口で鳴く。

霜降(10月23日ごろ)

  1. 霜始降(しもはじめてふる)
    霜が降り始める。
  2. 楓蔦黄(もみじつたきばむ)
    紅葉や蔦が色づく。
  3. 山茶始開(つばきはじめてひらく)
    山茶花(サザンカ)が咲き始める。

冬(立冬から立春まで)

立冬(11月7日ごろ)

  1. 山野僻(やまのくさかる)
    山野の草木が枯れる。
  2. 地始凍(ちはじめてこおる)
    地面が凍り始める。
  3. 金盞香(きんせんかさく)
    水仙の花が咲く。

小雪(11月22日ごろ)

  1. 虹蔵不見(にじかくれてみえず)
    虹が出なくなる。
  2. 朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)
    冷たい北風が木の葉を落とす。
  3. 橘始黄(たちばなはじめてきばむ)
    橘の実が黄色く熟し始める。

大雪(12月7日ごろ)

  1. 閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)
    空が閉ざされ、冬の気配が強まる。
  2. 熊蟄穴(くまあなにこもる)
    熊が冬眠のために穴にこもる。
  3. 鮭魚群(さけのうおむらがる)
    鮭が川を群れ成して上る。

冬至(12月22日ごろ)

  1. 乃東生(なつかれくさしょうず)
    夏枯草が芽を出し始める。
  2. 鹿角解(しかのつのおつる)
    鹿が古い角を落とす。
  3. 雪下出麦(ゆきわたりてむぎのびる)
    雪の下で麦が芽を出し始める。

小寒(1月6日ごろ)

  1. 芹栄(せりさかう)
    芹が生い茂る。
  2. 水泉動(しみずあたたかをふくむ)
    地下で凍った水が動き始める。
  3. 雉始雊(きじはじめてなく)
    雉が鳴き始める。

大寒(1月20日ごろ)

  1. 款冬華(ふきのはなさく)
    蕗の花が咲き始める。
  2. 水沢腹堅(さわみずこおりつめる)
    沢の水が氷で覆われる。
  3. 鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)
    鶏が卵を産み始める。

七十二候の活用例

1. 季節を感じる指標として

  • 七十二候は自然の変化を細やかに感じ取る手助けとなります。
  • : 「鶯の声を聞く」「蛙の鳴き声に気付く」など、日常生活で自然を意識。

2. 農業や漁業の目安

  • 農業や漁業では七十二候が作業の目安とされ、種まきや収穫、漁のタイミングを判断する参考になっています。

3. 旬の食材を楽しむ

  • 各候に対応する動植物や食材を取り入れることで、季節感を楽しめます。
  • : 春の「菜の花」や秋の「栗」など。

4. 文化や伝統行事に触れる

  • 七十二候に合わせた和歌や俳句、茶道などの文化活動を楽しむきっかけに。

七十二候を楽しむヒント

  1. 季節ごとの自然を観察
    • 七十二候に記されている現象や動植物に目を向け、五感で季節を感じ取る。
  2. 暦に基づいた行動
    • 七十二候を参考に、日々の暮らしやイベントを計画してみる。
    • 例: 「蛙始鳴(かわずはじめてなく)」に合わせて田んぼや池を訪れる。
  3. 現代風のアレンジ
    • 七十二候のテーマを取り入れたSNS投稿やイラスト、写真作品の制作など。

七十二候と現代社会

  • 七十二候は現代においても、季節感を取り戻し、自然とのつながりを深める指標として役立ちます。
  • 都市部で自然を感じにくい環境でも、七十二候を意識することで四季の変化を楽しむことができます。

まとめ

七十二候は、1年を通じて自然や季節の変化を細やかに感じるための素晴らしい指標です。農業や文化活動の基準としても役立つほか、日常生活に季節感を取り入れるきっかけとなります。

  • ポイント:
    • 自然の観察や旬の食材を通じて季節を楽しむ。
    • 七十二候を現代の生活に合わせて活用する。
    • 季節ごとの行事や文化と結びつけ、日々の生活を豊かにする。

七十二候を意識することで、日常生活に新たな楽しみを見つけてみてはいかがでしょうか?